母子家庭の俺に親切にしてくれた友人

俺と友人と友人の彼女
俺の家は母子家庭だ。
俺が中学に上がる前に両親が離婚して俺は母親に引き取られた。
母親はそりゃもう一生懸命働いてくれて、贅沢はできないけど特に何かに不自由することもなく俺は高校を卒業することができた。
大学には奨学金を借りて通うことにした。一人暮らしのための初期費用は母親に出してもらわなければいけなかったが、以降の仕送りは頼まなかった。
俺はアルバイトで生活費を稼ぎながら大学に通った。

毎日朝から授業を受けて夕方からはアルバイト。俺はサークルにも入らずにそんな毎日を送っていた。
アルバイトが終わってアパートに帰る頃には深夜2時をまわっていることも多々あり、俺は授業中に寝てしまうことが多くなった。
サークルにも入らず、放課後はアルバイトばかりの俺には友人なんて殆どいなかったが、一人だけ俺と同じ高校から進学したAという奴がいた。
Aとは高校二年の時に同じクラスで、三年になってからはあまり話すことはなかったが同じ大学に合格したということを知ってからは度々話すようになっていた。

Aは俺の事情を知っていたから「俺と同じ授業の時は寝ててもノート見せてやるから安心しろ」と言ってくれてとても助かった。
また、Aはよく「俺んちのじいちゃんが野菜育ててるんだけど、よく送られてくるからおすそ分け」と俺に食料を分けてくれた。
安いカップ麺やパスタで食事を済ませていた俺はAのおかげで偏った食生活にならずに済んだ。
そうやって俺はAに助けられて大学生活を送っていた。

大学二年の夏、Aに人生初の彼女ができた。Aが入っているサークルの後輩で美人だった。
「あーあ、お前に先越されちゃったなー」
「わりいな、羨ましいだろ?でもまあ、お前ともこれまで通り遊んでやるよ(笑)」
「うるせーな(笑)俺はバイト先で大人の女性に可愛がられてんの(笑)」
なんて冗談を言いながら俺らはその日は朝まで飲んで次の日は仲良く大学をサボった。
Aは本当に彼女が出来てからも俺とよく会っていた。
ある日は野菜を持って来たり、また別の日は授業のノートを持って来たり。
俺は「彼女放っといていいのかよ?」と聞いたがAは「まあね」としか言わなかった。

Aが付き合い始めてから二ヵ月経って、Aがフラれたと俺に報告してきた。
理由を聞いても「よくわかんねえ(笑)」としか言わず、俺もしつこくは聞かなかった。
Aは「俺、お前といる方がいいわ」と言って笑っていた。
俺も「まあ、お前には勿体ない美人だったもんな」と返しておいた。

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それから少し経って、俺はAがフラれた本当の理由を知った。
知人づてで俺の耳に入ってきたからだ。

Aの元カノは、Aと別れた理由をこう話していたらしい。
「だって、A先輩いっつもB先輩(俺のこと)の心配ばっかりなんだもん」
「A先輩さ、実家から野菜とか送られてきたら毎回B先輩のとこに持って行くんだよ。それに、私がたまには大学サボってデートしようって言ってもB先輩のためにノート取るからって。私よりB先輩の方優先するからついB先輩の悪口言っちゃって。そしたらすごく怒られたからフったの。」
元カノがAに言った俺の悪口は主に母子家庭のことらしくて、
例えば奨学金で通っていることやAに助けてもらってることに対してみっともないと言ったり卑しいと言ったり、それを母子家庭のせいだと、Aは集られてるんだと言ったらしい。

俺は母子家庭に対する悪口には慣れていたし、Aに頼っていることは事実だったからAに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
俺のせいでAはフラれたんだとわかり、俺は食堂に来たAを連れて空き教室に向かった。

俺はAに、Aがフラれた理由を聞いたことを伝え、Aに頼りきりで悪かったと、これからはAの生活を邪魔しないと謝った。
そしたらAは「お前の悪口を言う女に未練はないし、俺はお前を助けるちゃんとした理由がある。俺がやりたくてやってるんだから気にするな。」と言ってくれた。
俺は正直、どうしてAがこんなに俺のことを気にかけてくれるのかわからなかった。
俺はただAが同じ高校だったから仲良くしてくれてるんだと思っていた。
「お前が俺を助けるちゃんとした理由ってなんだよ?」
Aはあまり言いたくなさそうにしていたが俺は無理やり聞き出した。

「俺、親の仕事の都合で高校二年になるときに編入したんだ。でも、元々友達も多くなくて内にこもりがちだったから編入してからもなかなか友達できなくて、そのまま修学旅行の班決めの時期になっちゃって。俺一緒に行く人いなかったから修学旅行も休もうと思ってたんだけど、お前がさ、班に入れてくれて。当日も絶対来いよって言ってくれたから、俺修学旅行行けてさ。それからはクラスで友達も作れて、三年になってクラスが離れても大丈夫だった。
俺、あの時お前が班に誘ってくれなかったら今でも内気な奴だったと思うから。感謝してるんだ。」

俺はそんなこと全く覚えていなかった。Aが編入してきたことも。
俺はAとは二年で同じクラスで修学旅行をきっかけに仲良くなったとしか思っていなかった。
それでも、俺のしたことでAが救われたって聞いて俺の心は少しだけ軽くなった。
俺のために元カノに言い返してくれたことにもお礼を言った。

俺は大学三年になって、一年の頃より授業数も減ったこともあって生活に余裕が出てきた。もう、前ほどAを頼ることもなくなった。
Aにはまた彼女ができた。Aの彼女は俺にも優しく、奨学金で大学に通う俺を「凄い!」と言ってくれる。
よく俺とAと三人で遊んでくれるが、俺が遠慮して二人きりにすることもある。
Aとは、これからも長い付き合いになるような気がしている。

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今時ジョータ笑顔
母子家庭というのは自分の力ではどうにもならないことだし、それを言われてAも本当にカッとなってしまったんだろうな。
Aは人の気持ちに立って考えられる思いやりのある男だから、すぐに彼女もできてしまうんだろう。
そんな魅力的な友人がいて君は幸せ者だね。