高校時代のバンド仲間

バンドのギター
俺は高校の時に仲間たちとバンドをやっていた。
本当にあの時はプロのギターリストになりたくて友達と毎日のように練習。
今思い出しても、青春してたなって思う。
俺がギターを始めたのは小学生の時で、音楽番組を見ているとかっこいいギターリストがいて目が釘付け。
なんでこの人こんな早く指が動くんだ!
俺はどうにか親に頼み込んで、子ども用のミニエレキギターを買ってもらった。
後は全部独学で親に少し楽譜の読み方とかは教えてもらいながら毎日のように練習して、中学校に上がっても一人でギターに夢中だった。

高校に入ってから人とバンドを組んでみたいと思って軽音部に所属。
男だけのバンドを結成して、結構楽しかった。
ライブをするためには金がかかるから、コンビニでアルバイトしながら頑張っていた。
でも、高校二年の夏。
突然、ドラムの友達がバンドをやめると言い出した。
親から勉強してくれと言われたらしい。
たまに来るぐらいでもいいから来てくれないかと言ったが、だめだった。
そいつの家はあまり金がなくて大学に行くにも奨学金がかなり必要だった。
勉強すれば奨学金をタダで借りることもできるらしく、そのためには今必死にならないとだめなんだと言われた。
俺はそれを聞いて何も言えなかった。
確かにプロにはなりたいけどプロになれる保証なんてどこにもない。
しかも、金に関することはいくら友達とはいえ、俺含めバンドメンバーたちはどうしようもなかった。
ドラムがやめた俺らはどんどんやる気を失っていった。
一人でもやめたら俺たちはこうなるって・・・あの時痛感したんだ。
あのメンバーがいたからこそ、楽しかったっていうのもあったんだ。
あいつがやめた後も何度かライブはしたけど、どうもしっくりこないものになってしまった。

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それから俺たちは別々の道を歩いた。
最後には別のメンバーを探すことも考えはしていた。
だけど、やっぱりあいつがいい・・・それはみんな思っていたことだったんだ。
だからあの時やめたことは後悔はしていない。
ただ、なんとなく人が減っていって部室にどんどん顔を出さなくなったことは後悔している。
やめるにしてももっと話し合えばよかった…そういう気持ちだけは何となく残っていた。
俺は普通にそれから大学に行き、今ではピアノ販売の営業をしている。
なんでもいいから音楽に携わりたかったんだ。
もう働いて10年になる。
ある日、俺が勤める販売店にピアノを欲しいと家族が訪ねてきた。
娘をかわいがっているお父さんがいてその後姿を見て驚いた。
ドラムをやっていたあいつだったんだ。

「実は他の奴からお前がここで働いているのを聞いて」
が俺を見るなり、ばつが悪そうに頭をかいていた。
頭をかく癖は相変わらずだなあと懐かしく思った。
あの時のことがあって同じクラスでも話すことはなく、卒業してももちろん連絡を取ることはなかった。
「何歳だ?」
「もう、7歳になるよ」
「俺なんてまだ結婚すらしてないぞ」
そう言って、ぽつりぽつりと会話をして連絡先を交換した。

俺の学生時代にしこりのように残っている思い出を溶かすチャンスかもしれない・・・。
そう思った。
もしかしたら俺みたいに昔のことを思い出す、女々しい男はそんなにいないかもしれない。
だけどあの後しばらくして、居酒屋に飲みに行ってあいつと話した時思ったんだ。
ドラムのあいつも同じようにしこりになってずっと抱えてモノがあったんだということを・・・。
メンバーをバラバラにしたのは自分のせいだったんだと、あの頃のことを思い出せば自分を責めていたと教えてくれた。

俺はもっと早くこういう機会があってよかったのかもしれないと思った。
だけどこれだけ年数がたったからこそ、あいつも俺に訪ねて来れたのかもしれいないな。
今はたまにそのバンドメンバーを誘って飲みに行ったりしてるんだ。
こういう形に落ち着いて俺は本当によかったと思うよ。

最近、またギターを弾いて一人飲みして楽しんでいる自分がいる。
不思議とあの頃に覚えた曲はなんでも弾けてしまう。
今度遊びでもいいからまたあいつらと曲を楽しみたいな。
今はそんな風に思っている。

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今時ジョータ
仲間でやってきたことは、誰かひとりが抜けてしまうと一気にモチベーションがしぼんでしまうことがあるよな。
そいつのせいじゃないって頭では分かっていても、割り切るのはなかなか難しい。
時間を置いてからの再会で、また新しい関係性を構築できればいいな。