俺はもう40過ぎなるけど、普通の家庭で育った普通の男だ。
ちなみに独身。
今回は子供の頃の話を思い出して書いてみる。
俺の親父はサラリーマンで、母親は短時間のパートをしていた。
妹とはそれなりに仲が良く、本当に平凡な毎日を送っていた。
俺には小学校から仲がいい友達(B)がいて外でボール遊びをしたり、とにかく二人でよく遊んでいたんだ。
大体、遊ぶときはBの家に遊びに行ってお菓子を食べてくだらない話をして、居心地のいい相手だった。
Bの家に行けば、いいお菓子がいつも置いてあった。
俺の家の場合はポテトチップスとかガムとかそんなもんだったけど
いつもケーキとかクッキーとかまあ高級そうなお菓子が出てくるんだ。
飲み物はもちろんジュースやカルピス。
おまえはいつも美味しそうに食べるなあとBはにこにこしながら俺を見ていた。
Bはそういうお菓子を食べ飽きてるのか、そんなにがっついたりはしなかった。
中学生の時に上がってから、初めてBは本当に金持ちなんだって感じる出来事があった。
それは誕生日に親から買ってもらったと時計を見せられた時のことだ。
一度雑誌でその時計を見たことがあって、確か数万円する時計でこんな時計大人になったら欲しいなあとか考えながら眺めていた。
その時計をもう中学生のBがしていたんだ。
それには驚いた、でも羨ましがるのはダメだ。
違う気がした。
なんだかそう思った時点で俺はBをいままでのように好きになれない気持ちになってしまった。
Bは学校が終わった後はほとんど俺の家に遊びに来ていた。
とにかく俺の家はBにとっては居心地がいいらしい。
めっちゃ狭い部屋で二人で漫画を読んで何も話さない日もたくさんあった。
俺の家に来ると落ち着くと言って、たまにそのまま泊まることも多かった。
俺の母親はいつも礼儀正しいBにすごく親切だった。
お前の母さんってマジでいい人だよなあと、Bは人の親を異常に絶賛してたんだ。
その時の様子は今になっても思い出す。
中学生の頃、一度Bに言われたことがある。
本当に唐突に「俺、家出ようかな」って。
なんでだよ?そう聞いたら
別に家にいたって誰もいないし、親も共働きで忙しくて
出張とかもあって帰ってこないという話を聞いた。
(俺の子供時代は共働きは珍しかった)
お前の家に行くとこれが普通なんだよなって思い知らされる・・・
そう言われたんだ。
俺はなんて返事をしていいかわからなかった。
「まあ冗談だけどな」ってBはその後笑っていたけど。
俺はお前が羨ましいぞ、その時計が羨ましいぞと言ってやろうと思ったけど
その言葉は、その時のBには必要なさそうだった。
俺は思ったんだ、普通の家庭は案外いいものかもしれないってね。
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高校は俺の学力が足らずに、Bとは別々の高校に通っていた。
それでも関係は変らなかった。
相変らず、Bは俺の家によく来ては勉強をやったり漫画を読んだりと
いつもと変わらない感じだった。
たぶん、Bにとってその頃は俺の家にいることが普通になっていたんだ。
ところが大学生になると、急にBは顔を出さなくなった。
さすがに大学生になっても俺の部屋に入り浸ってるのは気まずくなったのかと思ったが
聞けば、大学で出会った彼女といきなり同棲を始めたらしかった。
親が家賃とか全部出してくれているそうで俺はそういう話を聞くたびに
すげーと思うだけで、もう金持ちだとかで羨ましいという気持ちはなくなっていた。
Bとは今でも親友だが、酔っぱらった時に一度だけ言われたことがある。
小学生、中学生とにかく俺は自由だったんだと。
親に管理されているなんて思ったことなんてなにもなかった。
でもその時の自由が俺にとって欲しかった物なのかは今は分からないと。
あの家は広すぎた、お前みたいな兄妹がいればなあ・・・・。
そういったことを言ってBは酔い潰れて眠ってしまった。
とにかくBはすごく素直な奴なんだ。
本当に素直過ぎてたまに俺が照れることをよく言う。
だけど俺はそういうことをいつも酔っぱらって言ってくるBを結構好きだったりする。
そして最近一番羨ましいと思うことと言えば・・・
今はめっちゃ面倒見のいい嫁がBにいるっていうことだ。
高い時計を持っているよりずっと羨ましいよ。
これが今の本音だ・・・。
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お金がないからって不幸だとは限らない。兄妹がいないからって満たされないとは限らない。
他人をうらやましがるんじゃなくて、今置かれた状況で目一杯楽しむのが重要だよな。
だけど……面倒見のいい嫁は、俺も羨ましい!