IT同期4人組

プログラミングPC
私は新卒時の就活で、大手のIT企業に就職することができました。
中堅大学に在籍していた私にとっては、とても満足のいく結果でした。

4月の入社式では100人以上の同期がいましたが、私の部署には私の他に男3人が配属されました。
お調子者で仕事もできるが、すぐ喧嘩腰になる新藤。
細マッチョでイケメンなのに、何故かいつもオジサンみたいな眼鏡をかけている結城。
あまり話さずマイペースだが、上司の受けがいい鈴木。
私は……自分で言うのも変なのですが、この3人のまとめ役のような存在でした。

会社の方針は「現場で覚えろ」というものでしたので、私たちは研修もそこそこに、すぐに小さな案件に投入されました。
その案件は既に炎上した状態で、ほぼ毎日が長時間残業、休日出勤も当たり前。
それをどうにか乗り越えても、次にはまた似たような案件が待ち受けています。

今振り返ってみれば、かなりブラックな職場でしたが、当時はそんな風には感じていませんでした。
地獄のような業務の中ストレスも大きなものでしたが、同期の仲間の存在が大きな支えとなっていたのです。

「なにやってんだよ、お前バカじゃねぇのか!?」
ミスをした鈴木に、新藤が口汚く罵ります。すると私や結城が、
「まあまあ」
と彼をなだめる……これがいつもの光景でした。

こう書くと、ギスギスした職場のように見えますが、決してそうではありませんでした。
鈴木に限らず、誰かが大ポカをやらかしたとき、私は必ずこう言ったのです。
「これは飲みに行くしかないな」
すると、他の3人も同調します。
「デスヨネー」
「じゃあ今日は鈴木ん家な!」
「わかったよ、だけどあんま散らかすなよ。特に結城」
「えっ、俺かよ。俺いつも散らかしてないじゃんか」
「いややいやいやいや!」

「飲みに行く」というのは「宅飲みをしよう!」という提案なのです。
仕事のミスだったり、仲間うちの喧嘩だったり、上司から理不尽に怒られたり……。
何か嫌な事がある度に、俺たちは誰かの家で宅飲みをしていました。
みんな一人暮らしで、それぞれワンルームや1Kといった狭い部屋に住んでいました。
そんなところへ4人が集まるのですがら、お酒やつまみを並べて輪になって座ると、もうギュウギュウです。

「お前もっとそっち寄れって!」
「嫌だよ、なんだか結城の奴汗臭いし」
「マジかよ……って、うわっ本当だ!」
「何でそんなに汗臭いの?」
「えーっ、知らねぇよ。昼休みランニングしてたから?」
「それだ!!」

だけど、そんな風にワイワイとやる夜はとても楽しいものでした。
膝を突き合わせて仕事のことを話したり、上司や会社に対する愚痴を言い合ったり。
この仲間でないと話せないことをたくさん話しました。
そうしていると時間はあっという間に過ぎていきます。

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終電で帰る日も多かったのですが、私たちはよく深夜まで飲んで、そのまま雑魚寝をして翌朝にはみんな揃って会社に行く……なんてこともありました。
一人暮らしの設備しかないのものですから、朝は大変です。
トイレや洗面所はどうにかなるのですが、お風呂が一番の問題です。
4人が代わる代わるにシャワーを使うのですが、本当に時間がない時は2人ずつ一緒に浴室に入って同時にシャワーを浴びたりもしました。

だけど、そんな日々もずっとは続きませんでした。
入社から2年目になり結城が別部署へ異動になると、徐々に宅飲みをする回数は減ってきました。
3年目には鈴木が結婚し家庭を持ちます。
私もサブリーダーに抜擢されて後輩の面倒を見るようになると、もう4人で集まるようなことはなくなってしまいました。

そして4年目、新藤は真剣な表情で、私に打ち明けてきました。
「俺、ゲーム会社に転職することにした」
「そうなんだ……」
「ずっとやりたかったことだから」
「応援するよ」
「ありがとう。お前と鈴木、それに結城にはすっげぇ感謝してるから」
「どうしたんだよ、急に」
「いや、真面目な話でさ。お前たち3人がいなかったら俺、苦しくて会社辞めてたと思う。今頃ニートだ」
「それは俺も同じだよ。新藤たちと飲み明かしてた日々があったから、やってこれたんだ」
「ははっ、そっか。頑張れ、サブリーダー」
「お前も、新しいところでしっかりやれよ」
私たちはお互いに肩を叩き合って、それでお別れは終わりました。

4人の同期はバラバラになってしまいましたが、決して絆が弱まったわけではありません。
今でも私は新藤、鈴木、結城の存在を心の中で支えにしていますし、きっと彼らも同じなのだと思います。

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そうそう、そうなんだよな!
人はいつか、離ればなれになっちまうことがある。
だけど心の繋がりは永遠……それは間違いないんだぜ!