学生時代に出会えた尊敬できる男

ラーメン屋
俺が大学の時にラーメン屋で3年間アルバイトをしていた時の話です。
最初は友達と海外旅行に行きたくて短期間で稼ぐことを目的に、時給のいいバイトを探していました。
その時に見つけたのがラーメン屋のアルバイトで、最初はラーメンを運ぶだけの仕事だと甘く見ていました。
そんな生半可な仕事ではないことがバイト一日目で判明。
オープニングスタッフとして働くために、挨拶から笑顔の作り方まで何度も練習をしました。俺は接客業が初めてだということもあり、口の聞き方もわからずにいました。
そのため、他の店から来た応援スタッフ(Aさん)に厳しく指導されました。
研修は2週間ありましたが、時間がたてば経つほどすいませんが口癖になっていて、短期間ですぐにやめるからとにかく今は頑張ろうという気持ちで精いっぱいでした。

オープンの初日はさすがに緊張して注文を取る手がふるえていました。
注文を間違ってしまったり、客に気を遣わせたりと散々な結果で、その日Aさんにこっぴどく叱られました。
「みんな忙しいからお前のフォローまでできない。いい加減にしろ!
そう言われてその通りだと思いました。
もうやめてしまいたい。
接客業ではないバイトの方が向いているのではないかとその日はひどく落ち込んで帰ったのを今でも覚えています。

でも次の日、店長から
「お前は声だけはちゃんと出ていたから、今日も昨日の調子でいけ。」
と言ってもらって一気に気持ちが晴れました。いつも厳しいAさんにはなにも言われませんでしたが、店長の一言でなんだかやる気が出てきました。
その日は割とスムーズに仕事が進み、ミスも初日よりは格段に減っていました。
店長からも
「今日もよく頑張ったな。」
とタイムカードを切る時にお褒めの言葉を頂いて次の日も頑張ろうという気持ちになりました。
ただ、Aさんは、
「今日もミスあったぞ。反省して来い。」
と一言。
相変わらずきついなあと思いました。
それからなんとか週4、5日でバイトをこなしてだいぶ仕事にも慣れていきました。
その頃には海外旅行から帰った後もここで働きたいとすら思い始めていました。

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そんなある日、俺は究極のミスをおかしました。

お客さんが床に置いていた高そうなバッグにつまずいてラーメンをこぼしてしまったんです。
幸いラーメンが誰かにかかったりすることはありませんでしたが、お客さんのバッグに汚れがついてしまってクリーニングいきです。
お客さんにひたすら謝り、クリーニング代を渡してなんとか許してくれましたが店長にもその日はめちゃめちゃ叱られました。

その時、俺と一緒にAさんも頭を下げてくれたのですが、怖すぎてお礼の挨拶もいけませんでした。
そのまま暗い気持ちでバイトが終わり、クリーニング代金は後日持ってきますと店長に言ってバイト先を出ました。
後ろから
「ちょっと待てよ!」
と言われて振り向けば、Aさんでした。
今日のことでお礼も言っていないし、言いたいことがあるんだろうと思って立ち止まると「とりあえず、飲みに行くぞ!」
といきなり誘われました。
驚きましたが、俺はうなずくことしかできずにAさんについて行きました。

近くのおでん屋さんでひたすら沈黙の時間が続きました。
もうどうにもならない空気でとりあえず、今日のことを謝ろうと思い
「すいませんでした。」
と小さな声で言いました。
「声が小さい!」
と怒鳴られ、
「はい!すいませんでした!」
俺の大きな声が店中に響いたと思います。
もうこの場から逃げ出したいと思いました。
でもいきなり、Aさんが笑い出して
「やっぱりお前は声だけはでかいな。」
と言われました。
「すいませんが多すぎるけどな。」
「はい、すいません・・・。」
「そんなびくびくするな。店長からの伝言でクリーニング代はいらないってことだ。
来週から海外行くんだろ?金かかるだろ。」
そう言われました。
「それは自分の責任なので返します。もう少しでやめますし・・・・。」
「店長がいいって言ってるからいいんだ。ただ一つだけ店長に頼まれたんだ
バイトやめさせないように言ってくれってな。海外行くのも10日くらいだろ。
その後また戻ってこい。」
そう言われた時は声が出ませんでした。
「お前はミスが少し他の奴より多いだけで、声もでかいし、とにかく一生懸命だ。そこは俺もちゃんと見てる。だから頑張れ。」
泣きだしそうになりましたがぐっとこらえました。

その後、俺は帰ってきた後も働く約束をして海外旅行に行き、お土産を買ってラーメン屋に戻りました。
「色々とありがとうございました!」
とお礼を言ってAさんにお土産を渡しました。
「はじめてお前、俺に礼を言ったな(笑)」
そう言って笑っていました。
それからも厳しくも優しいAさんとは社会人になった今では頼れる先輩としてたびたび一緒に飲みに行っています。
バイトでの教えがあるからこそ、今の俺になれたと思っていますし、今でもAさんを尊敬しています。

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最初はお金を稼ぐだけのつもりだった短期バイト。
そんな場所でも、尊敬できる人と出会うことがある。
これが運命の出会いってヤツなのかな?