厳しくも優しい上司との出会い

俺と上司
俺はいい上司に出会えたことを感謝している。
最初はとにかく、厳しい先輩で何をするにも怒られた。
俺も言葉遣いが悪かったり、あんまりいい部下ではなかったんだろうなあと当時を振り返ってみればわかる。
あの頃は仕事についてはすぐに弱音を吐いてはへとへとになって帰っていた。
もう入社三ヶ月で毎日のようにやめたいと何度口にしたことか・・・。
大学からの友達と会えば、上司の悪口で盛り上がっていた。

だけど俺にはその時、付き合っている彼女がいて、その彼女には弱音なんて吐けなかった。
その子は高校卒業と同時に働いていて、社会人としてはもう7年の先輩。
接客業で大変なことも多いはずなのに、愚痴は一切言わない。
そんな彼女の前で俺は愚痴なんて口がさけても言えなかった。
まだ付き合って半年だし、かっこ悪いところなんて見せられない。
俺はそんな風に思っていた。

とにかく、しっかりしている彼女でその頃は半同棲状態。
俺が疲れているといつも優しく迎えてくれていた。
彼女の顔を見れば、笑顔になれたし、仕事で大変なことがあっても忘れられたんだ。
だけど、朝になれば
「また会社だ・・やめたい。」
と頭の中で繰り返し言っていた。

そんなことばかり考えていたせいか、ある日俺は大きな発注ミスをおかしてしまった。
得意先に上司と一緒に謝りに行ったが本当にあの時は、上司の顔が見れなかった。
申し訳ありませんでしたと何度も一緒に謝ってくれる上司に、俺は情けない気持ちでいっぱいだった。
ミスした俺にいつものように怒るかと思ったらそういうこともなく、確認しなかった俺の責任だと言われてしまった。
その時は怒られる方がよっぽどましだった。
俺がミスしたのに他の人に謝らせている自分がふがいなくて、やりきれない気持ちになったんだ。
ただ一言、
「こんなミスくらいでやめるとか言うなよ。」
と上司にはそう言われた。
俺は小さくうなずいていた。

その日は彼女が来る予定だったけどさすがに彼女に会う気持ちにはなれなかった。
彼女に電話で断って夜は一人で過ごした。
どうして発注ミスしたのか?
俺はこれからどうしたいのか?
必死になって色々と考えた。
でも、その時に思ったことはただ一つ。
仕事をやめたいって唱えたらだめだということ。
隙ができたらそれは仕事に影響する。
俺は入社半年たってようやく、「仕事をする」というスタートラインに立った気がした。

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それからはとにかく、なんでもメモを取り、自分がどうやって仕事と向き合っていくのかを考えていた。
ミスをしないように再度確認したり、俺は自分なりのやり方を見つけていった。
上司には相変わらず、細かいことで怒られていたものの、前よりもへこむことがなくなった。
彼女にも平日に会うのは極力やめようと伝えた。
今、仕事を頑張る時期だからと俺なりにけじめをつけたかったんだ。
彼女も寂しいと言いながら渋々受け入れてくれた。

そしてしばらくたってある時、居酒屋で彼女と食事をしている時、偶然上司夫婦と会ったんだ。
プライベートではさすがに会いたくないと思っていたが、もう会ってしまったからにはしっかり挨拶しようと思った。
俺が挨拶すると、一緒に飲もうと誘ってきた。
俺は最悪だなあと思った。
だけど断ることなんてできない。
なにせ、できないダメ社員の俺のことを十分知っている上司だ。
その上司が彼女の前で何か言えば、俺の面目は丸つぶれだ。
しかも彼女との半同棲を断ってまで頑張っている下積みの時期だ。
そんな時にもし何か言われたら・・・そう思うと、最初からびくびくしてしまった。
「なにビールをちびちび飲んでいるんだ?もっとぐいっといけ!」
と上司は俺にいつも通りに強めで話しかけてきた。
すると、奥さんが
「若い人のペースでいいじゃない。
ほんとうにごめんなさいね。この人うるさいでしょ?
でも家ではあなたのことすごく褒めているのよ。」
そう言って俺に笑いかけてくれた。

俺はまさかの言葉にビールを吹き出すかと思った。
「久しぶりに骨のあるやつが入ってきたって。
よくあなたの話をするのよ。」
彼女もその奥さんの話を聞いてにっこりしていた。
上司を見るとちょっと顔が赤くなった気がした。
そんなことを言われるとは思いもしなかったから、俺はとりあえず勢いで酒をがぶがぶ飲んでいた。
その後、酔いつぶれた俺を彼女がタクシーで運んでくれたらしい。
次の日、俺が酔いつぶれてしまったことを謝ると、照れくさそうにそんなのは気にしていないと上司は俺の目を見ようとはしなかった。
あの後、きっと奥さんに余計なこと言うな!と上司は怒ったに違いない。
だけど、頑張っていることを認めてくれていることが嬉しくて、俺はそれからも仕事を頑張れた。

上司夫婦とはその後も何回か飲みに行って仲良くしている。
男同士の友情というか、仕事の話をすれば、熱くなり、盛り上がっている。
俺は割と今の仕事が好きだ。
あの時、仕事に向き合ってよかったと本当にそう思っている。

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今時ジョータ笑顔
普段は叱ることの多い上司だけど、君のことをしっかりと評価してくれて、いざというときはフォローも欠かさない。
年が離れていても信頼関係さえ芽生えれば、それは男の友情と言って差し支えないんだぜ!